働く前に知りたい税と社会保険
健康保険とは?入ると何がいいの?
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前回の「雇用保険とは?入ると何がいいの?|働く前に知りたい税と社会保険」では、会社を失業した時に、どんなお金がいくらもらえるかについて、見ていきました。
今回は、みなさんの生活にとっても大切な「健康保険」について見ていきます。
以下の内容は、あくまで就職する前に知っておきたい最低限の情報になるので、より詳しい情報は働き出したらぜひ調べてみてください。
健康保険とは?入ると何がいいの?
健康保険とは、医療保険のなかでも代表的なもので、病気やケガをした時、医療費の負担を減らしてくれる保険です。学生時代は家族と同じ健康保険に入っていることも多いので、もともと健康保険を知っている人もいれば、就職して自分で保険料を払うまで健康保険についてあまり分からないという人もいると思います。 健康保険に入っていると実は病院などに行く医療費がとても安く済みます。一般的な病院で、例えば3000円払っているとしたら、実際にかかっているお金は1万円近くになっていて、7000円ほどは健康保険がカバーしてくれています。もし健康保険に入らないと、この場合1万円まるまる支払うことになりますし、もっと医療費が高い場合には、その負担はもっと高くなります。
こういった理由から、もし健康保険に入らないと、気軽に通院できなくなってしまうので、日本では原則全員が健康保険に加入し、病院などに行くお金の負担を減らせるような仕組みになっています。
これ以外にも、健康保険に入るとどんな良いことがあるのか見ていきます。以下の保障は、すべて会社で働きだしたその日からもらうことができます。
傷病手当金~仕事以外のケガ・病気で4日以上休む時の給料保障~
会社で入る健康保険には、いざという時に助けてくれる大事な保障があります。ひとつは、病気やケガで会社を休む時に保障してくれる「傷病手当金」です。
風邪や骨折などの仕事と無関係の病気やケガで土日を含めて4日以上休んで治療しないといけず、その休んだ期間に支給されるお金です(オンラインなど何らかの形で働くなどで、仕事ができ、給料の支払いがある場合にはもらえません)。
例えば以下のようなときに利用できます
- インフルエンザによる出勤停止期間
- 風邪や骨折など業務起因性のない私傷病での欠勤
- 妊婦さんが初期つわりで欠勤
- 私生活が原因のメンタルヘルス疾患
- 新型コロナウイルス感染症を発症し、陽性反応が出ている期間
月給などによって実際の支払い額は代わるのですが、例えば、月給20万円のAさんの例で見てみます。 もしケガなどで3か月(90日)ほど休むとなった場合、収入が0か、40万円ほどもらえるかではとても大きな差です。勤務先や地域によって若干、金額は変動しますが、かなりまとまった金額が支給されるのがわかります。
もらえる期間は、同一の原因の傷病であれば、支給がはじまった日からもう1度働けるようになるまで(最長通算1年6ヶ月)になります。
出産手当金~出産前後100日間の給料保障~
もうひとつ大事なのは、出産前後に会社を休んだ期間のお金が支給される「出産手当金」です。出産の前と後にそれぞれ42日、産後56日を休ませるよう、会社側は労働基準法で義務付けられています。つまりこの期間中は会社を休むことになるので給料は支払われませんが、代わりに健康保険からお金が支給されます。実際の支給額は、傷病手当金と同様、だいたいもともとの月給の2/3が目安です。例えば、先ほどのAさんであれば、以下のようになります。 Aさんの場合、約3か月間の休みに対して、37万円ほどが支給されます。健康保険に入ってないとこの間は収入が0になってしまうので、健康保険に入っていると、いざという時にとても助かると思います。
会社で健康保険に入れない時は?国民健康保険と健康保険の違い
自分の勤務先で健康保険に入れない時、自分で入る「国民健康保険」というものに入りますが、会社で入る健康保険とは何が違うのでしょうか。まず、保険料の金額が違います。
例えば先ほどのAさんでは以下のようになります。 月給によって保険料は若干変わりますが、国民健康保険は負担が大きいです。これは、健康保険では保険料の半分を会社が負担してくれますが、国民健康保険は自分ひとりで保険料を支払うからです。
さらに扶養家族がいる場合、その差は大きくなります。国民健康保険では家族の人数に応じて保険料が高くなりますが、健康保険では、家族の人数に関わらず原則1人分の保険料で済みます。
例えば、Bさんでは以下のようになります。 また、保障も違います。
国民健康保険では、健康保険でもらえる傷病手当金などはもらえません。
このように保険料だけでも年間数万~数十万円、また働き続けるなかで出産や子育て、介護をすることになったり、万が一病気などで働けなくなったりすると年間数十万円単位で支払う金額が変わってきます。そのため、健康保険に入っている会社かどうかは、会社を選ぶときに重要なポイントになるのです。
病気やケガで大変なときに助けてくれる健康保険
病気やケガ・出産などで仕事を休む時、会社で健康保険に入っていれば、これらの給付に加えて、まとまったお金がもらえるケースもあるので、就職先が健康保険に入っているかどうかは大切になります。お金のことが不安でも、ある程度の補償あれば安心して休むことができるかも知れません。原則として、一部の会社を除き、ほぼすべての会社が健康保険に加入することを義務付けられていますまた、原則は週30時間以上働くことで、会社の健康保険が適用になります。30時間以上働く場合、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイトも適用になります。
従業員数100人以下の会社では労働時間が週30時間以上で加入が必須になります。
従業員数100人以上では、月88,000円以上の給与を得ていれば週20時間以上を超える場合、健康保険の加入が義務付けられています。
※この条件に当てはまる学生は加入に義務はありません。
時間数を満たせば、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイトも適用になります。
会社で健康保険に入れない場合には、自分の住んでいる地域の役所で、「国民健康保険」に入る手続きを自分で行う形になります。国民健康保険は負担が大きいし、あまり病院に行かないなら必要ないじゃん!と思うかもしれませんが、以下はどちらの健康保険でも国民健康保険でも保障されるものです。
- 保険診療(美容皮膚科などの美容目的以外はほとんど該当)の医療費が3割負担になる(例えば1万円の場合、3,000円の負担で済む)
- 出産育児給付金…1人出産すると、原則42万円支給される
- 高額医療費制度…1ヶ月の医療費が高額になった場合に、一定額以上は払わなくてよい制度(例えば、月給20万円のAさんのような場合、入院等で月に50万円かかったとしても、1か月で支払わなければならない金額は57600円となります) 等
なお、実際の手続きは、勤務先の人事総務などの担当者が行うので、もし働きはじめてから大きな病気などをした場合には相談してみましょう。
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