親子関係カウンセリング#14:親が重い・逃げたい
虐待ってどこから?
- 暴言・無視・ひいき
- たたく・殴る
- 性被害・わいせつ
- 体験談・インタビュー
このコラムは2020年に行われたオンライン相談会「YouTube Live親が重たい。逃げたい。親との関係どうしたらラクになる?」の書き起こしです。
「YouTube Live親が重い。逃げたい。親との関係どうしたらラクになる?(#1~#9)」のプレイリスト
前回は「親の依存と役割逆転」についてでした。
今回は「虐待ってどこから?」についてです。

ゲスト:信田さよ子さん
公認心理師・臨床心理士の資格を持つカウンセラー。親子、夫婦関係など家族問題に関するカウンセリング経験が多くあります。
公認心理師・臨床心理士の資格を持つカウンセラー。親子、夫婦関係など家族問題に関するカウンセリング経験が多くあります。

MC:太田尚樹さん
Mex(このサイト)がやっているYouTube LiveでMCを担当しています。
Mex(このサイト)がやっているYouTube LiveでMCを担当しています。
虐待は4種類ある

今回は親との関係に関する相談会としてお送りしましたが、話の中でも何度か「虐待」という言葉が出てきました。
虐待と聞くと、「暴力のこと?」と思うかもしれません。
しかし、虐待は(殴る・蹴るなどの)暴力だけではなく、4種類あると言われています。その4つをご紹介しておきたいと思います。
虐待と聞くと、「暴力のこと?」と思うかもしれません。
しかし、虐待は(殴る・蹴るなどの)暴力だけではなく、4種類あると言われています。その4つをご紹介しておきたいと思います。
①身体的虐待

熱いお湯をかけられる、縛られたり動けないような状態にされる、髪の毛を引っ張る、無理やりお風呂に沈める、などといった、たとえ傷跡が残らなくても、からだを傷つけられることは「身体的虐待」と言います。
②心理的虐待

自分のことを無視したり脅すようなことを言われる、自分の前で他の家族を殴ったり脅したりする、他の友達やきょうだいなどと比べて明らかに不公平な扱いをしてくるなど、こころを傷つけることは「心理的虐待」です。
③性的虐待

水着で隠れる部分のことをプライベートゾーンと言いますが、そのプライベートゾーンやその近くを触られたり、触らされたりする、エッチな映像を見せられる、裸の写真を撮られるなどは、「性的虐待」と言います。
性的虐待はもしかしたら女子が被害者だというイメージがあるかもしれないですが、男子でも被害にあうことも十分にあります。 虐待をする側ももちろん男子だけとは限らないですし、同性同士でも十分あり得ます。
男だから、女だから、という理由で性的虐待かどうかを判断することはなくて、エッチなことや恥ずかしいことをされたらすべて性的虐待です。
性的虐待はもしかしたら女子が被害者だというイメージがあるかもしれないですが、男子でも被害にあうことも十分にあります。 虐待をする側ももちろん男子だけとは限らないですし、同性同士でも十分あり得ます。
男だから、女だから、という理由で性的虐待かどうかを判断することはなくて、エッチなことや恥ずかしいことをされたらすべて性的虐待です。
④ネグレクト

あとは、生活に必要なものを与えてくれないという形の虐待もあります。それをネグレクトや育児放棄と言います。
家に閉じ込めたり、学校に行きたくても行かせてくれない、具合が悪くなっても病院に行かせてくれない、家や車の中で長い時間1人にされる、極端に家が汚いなど、困っているのに助けてくれないことも「ネグレクト」になります。
家に閉じ込めたり、学校に行きたくても行かせてくれない、具合が悪くなっても病院に行かせてくれない、家や車の中で長い時間1人にされる、極端に家が汚いなど、困っているのに助けてくれないことも「ネグレクト」になります。

虐待ってどこから?

何が虐待で何が虐待でないかは子どもであるみなさんが決めて良いことになっています。
これまで例で挙げたこと以外にも、みなさん自身が「つらい」「一緒にいるのがしんどい」と感じることがあれば、虐待という可能性は十分にあり得ます。
これまで例で挙げたこと以外にも、みなさん自身が「つらい」「一緒にいるのがしんどい」と感じることがあれば、虐待という可能性は十分にあり得ます。

虐待は強い言葉に聞こえるので、自分は違うだろうって思ったりする方もいますが、実は身近なものです。
僕の友達も、ずっと自分が虐待を受けていたっていうことに気づくこともなく、大人になって「なんかしんどいなあ」って思い、人の勧めがあって病院に通うようになりました。
その時に昔の話になり、「ああ、昔ずっと虐待を受けていたんですね」と言われて、その方は初めて認識しました。それくらい虐待は多くの人にとって身近なものです。
そこで信田さんにうかがいたいのですが、「そんなの違う、自分が受けているのは虐待じゃない」っていうように受け入れられない子もきっといるのではないかと思うんです。そういった子はどうしたら良いんでしょう?
僕の友達も、ずっと自分が虐待を受けていたっていうことに気づくこともなく、大人になって「なんかしんどいなあ」って思い、人の勧めがあって病院に通うようになりました。
その時に昔の話になり、「ああ、昔ずっと虐待を受けていたんですね」と言われて、その方は初めて認識しました。それくらい虐待は多くの人にとって身近なものです。
そこで信田さんにうかがいたいのですが、「そんなの違う、自分が受けているのは虐待じゃない」っていうように受け入れられない子もきっといるのではないかと思うんです。そういった子はどうしたら良いんでしょう?

それを無理に納得させることは難しいですよね。ただ、自分は納得しないけどあの人はこれを虐待と言ったという記憶は残ります。
それがいつか「自分は虐待なんて思ってないけど、AさんもBさんも自分のことを虐待って言ったな」ということが、自分の中で統合でき、まとめてとらえられるような時期が来ます。それがいくつになるのかわからないけど。
それがいつか「自分は虐待なんて思ってないけど、AさんもBさんも自分のことを虐待って言ったな」ということが、自分の中で統合でき、まとめてとらえられるような時期が来ます。それがいくつになるのかわからないけど。

自分の中で(自分が受けていたのは虐待であったと)受け入れやすい時っていうのがきっと来るだろうし、その時に受け入れたかったらそう思えば良いっていうことなんですか?

でも、ずっと死ぬまで思わない人もいるから。これを虐待って思っちゃうと、「あの母親を自分は虐待者だって言っている。そんな自分が嫌だ」っていうふうに、40歳でも50歳でも思う人は多いですよ。
特にこれは男性に多いです。女性は意外とすぐに、「あ、虐待だな」って受け入れられるんですよ。
女性は子どもを産んだりすると、自分はあの親みたいなこと絶対この子にできないなって思うんです。その瞬間に、あれは虐待だったんだって認識します。親になってはじめて分かるんですね。
特にこれは男性に多いです。女性は意外とすぐに、「あ、虐待だな」って受け入れられるんですよ。
女性は子どもを産んだりすると、自分はあの親みたいなこと絶対この子にできないなって思うんです。その瞬間に、あれは虐待だったんだって認識します。親になってはじめて分かるんですね。

自分が親側になったときに気づく人もいるんですね。受け入れるタイミングがふと来る人もいたり、来ないままの人もいたりするということですか?

そうですね。だから周りが「それ虐待なんだよ」って言うと、かえって周りに対する拒絶感が強くなることもあります。


虐待は誰が悪い?

1つ、このお話に関わる投稿をいただいているので、それもご紹介させていただきます。




というですね、大体小学生か中学生くらいの年齢の方からいただいた投稿でした。

すごく深刻なお悩みです。きっとすごくつらい気持ちを感じていて、もしかしたら虐待とはっきり言っていいことを経験しているのかもしれないですし、つらい気持ちを持たれているのだと思います。
こういったように「自分が悪いんだ」とか、「生まれてきた自分がダメだ、たたかれる自分がダメだ」って思ってしまう子っていっぱいいると思うんですけど、信田さんはそういった子に対してなんて声をかけたりしますか?
こういったように「自分が悪いんだ」とか、「生まれてきた自分がダメだ、たたかれる自分がダメだ」って思ってしまう子っていっぱいいると思うんですけど、信田さんはそういった子に対してなんて声をかけたりしますか?

「自分が悪い子だ、私が悪いからこういうふうにされるんだ」っていうのは、その子が自分自身で生んだ考えではないんですよ。親がそう思っているから、親の考え通りになっているんです。
だって親は殴るときに「この子が私を殴らせる」って思って蹴ったりた叩いたりするでしょう?親は虐待と思ってないですからね。
だって親は殴るときに「この子が私を殴らせる」って思って蹴ったりた叩いたりするでしょう?親は虐待と思ってないですからね。

「あんたが言うことを聞かないからこうなるのよ」「なんでいつも私の言うとおりにならないのよ」って殴ったり蹴ったりしますよね?
そのまま受け止めると、子どもは「自分は悪い子だ」「生きている意味がない」「こんなこと言ってかわいそうアピールだ」「私なんか生きている価値ないよね」ってなります。
だから、この様に思うことは、虐待の1番の悪影響なんです。
体や心に傷が残ることじゃなくて、子どもが自分自身に対して「自分は悪い子だ」「私は生きている価値がない」って思ってしまうことが虐待の最大のポイントです。
そのまま受け止めると、子どもは「自分は悪い子だ」「生きている意味がない」「こんなこと言ってかわいそうアピールだ」「私なんか生きている価値ないよね」ってなります。
だから、この様に思うことは、虐待の1番の悪影響なんです。
体や心に傷が残ることじゃなくて、子どもが自分自身に対して「自分は悪い子だ」「私は生きている価値がない」って思ってしまうことが虐待の最大のポイントです。

世界の中でも、日本は子どもの自殺が異様に多い国です。
子どもの虐待の結果、こういうふうに思って自殺する子どもは結構多いと私は思いますね。
子どもの虐待の結果、こういうふうに思って自殺する子どもは結構多いと私は思いますね。

じゃあこの子は悪くないんですよね?

悪くないに決まってるじゃん!
それに、ものすごく親の言うことを1番に聞いてるんでしょう?本当に親の期待通りですよ。親の言うとおりに「自分は悪い子だ」って思っているんだから。
そういう子になんて言ってあげたら良いか私はちょっと良くわからないけど、生きていた方が絶対良いので、とにかく死なない方が良いと思う。
頑張って生きて、もうちょっと生きてもらいたいです。あと太宰治なんか読んでもらいたいです。太田さん、読んだ?
それに、ものすごく親の言うことを1番に聞いてるんでしょう?本当に親の期待通りですよ。親の言うとおりに「自分は悪い子だ」って思っているんだから。
そういう子になんて言ってあげたら良いか私はちょっと良くわからないけど、生きていた方が絶対良いので、とにかく死なない方が良いと思う。
頑張って生きて、もうちょっと生きてもらいたいです。あと太宰治なんか読んでもらいたいです。太田さん、読んだ?

読みましたよ。良いですよね。

今の投稿の文章を読んでいて、「太宰治みたいだな」って思ったんですよ。そんなつらい思いに関する文章をほめて申し訳ないけど。
でも、こういうことをちゃんとスマホでもいいから書き続けて、あと1年は生きてもらいたい。
でも、こういうことをちゃんとスマホでもいいから書き続けて、あと1年は生きてもらいたい。
家から逃げたいほどつらい時は?

最後いくつかお伝えしておきたいことがあります。
相談できる相手がいると良いよという文脈で、スクールカウンセリングに行ってみるとか、いろんな人に迷惑なんじゃないかと思わず、自分が頼られたらうれしいと思うのと一緒で、誰かに話してみるのが良いよっていうお話が出ました。
それでもやっぱりなかなかそういう人を見つけられなさそうって思う方もいるんじゃないかと思いますが、そういった方のための避難場所があります。
家から逃げたい場合、何かつらい場合、児童相談所や警察などが保護してくれたり、場合によっては児童養護施設などの施設で一時的に暮らすことができる場合もあります。
相談できる相手がいると良いよという文脈で、スクールカウンセリングに行ってみるとか、いろんな人に迷惑なんじゃないかと思わず、自分が頼られたらうれしいと思うのと一緒で、誰かに話してみるのが良いよっていうお話が出ました。
それでもやっぱりなかなかそういう人を見つけられなさそうって思う方もいるんじゃないかと思いますが、そういった方のための避難場所があります。
家から逃げたい場合、何かつらい場合、児童相談所や警察などが保護してくれたり、場合によっては児童養護施設などの施設で一時的に暮らすことができる場合もあります。

シェルターもあるんですよね。


はい。匿名で相談することもできるので、今の環境から逃げたいっていう時は、電話で「いち早く(「189」:いち(1)はや(8)く(9))」で児童相談所につながるので、そこに連絡していただけたらと思います。
信頼できる人がどうしても見つけられない場合や、見つけるのに今は抵抗があるっていう場合は、信田先生も言っていたように本を読んでみるとか、自分にとってロールモデル(こういう人になりたい、こういう人に憧れるっていう人)を見つけることは1つの希望になると思います。
こんな人にいつか会いたいと思うことが生きていく力になることもあるので、ぜひ本をたくさん読んでほしいです。映画を見るでも良いし、何かそういったものに触れることが大事なのではないかと思います。
信頼できる人がどうしても見つけられない場合や、見つけるのに今は抵抗があるっていう場合は、信田先生も言っていたように本を読んでみるとか、自分にとってロールモデル(こういう人になりたい、こういう人に憧れるっていう人)を見つけることは1つの希望になると思います。
こんな人にいつか会いたいと思うことが生きていく力になることもあるので、ぜひ本をたくさん読んでほしいです。映画を見るでも良いし、何かそういったものに触れることが大事なのではないかと思います。
カウンセラーから10代へのメッセージ

全14回にわたってお送りしてまいりましたが、信田さん、最後に一言10代のみなさんにいただけたらと思います。

今回で私、本当に今の10代の子どもたちって大変だなあと思いました。ちょっと胸が痛む。
本当にみんないい子たちだし、我慢しなきゃと思ってるし、親のことすごい思ってる。だから私は、本当に苦しかったら、第三者にちゃんと相談してもらいたいと思う。自分が壊れないためにも。
本当にみんないい子たちだし、我慢しなきゃと思ってるし、親のことすごい思ってる。だから私は、本当に苦しかったら、第三者にちゃんと相談してもらいたいと思う。自分が壊れないためにも。

本当ですよね、立派ですよね。

立派。ほんと感動しました。

うん、本当にそれだけはお伝えしておきたいと思います。本当に皆さん、全14回にわたってありがとうございました。また、どこかで会えたらと思います。本当にありがとうございました。

ありがとうございました。