親子関係カウンセリング#7:親が重い・逃げたい
親の仲が良かったり悪かったりする
- 暴言・無視・ひいき
- 体験談・インタビュー
前回は「親が監視・束縛してくる」についてでした。
今回は「両親の仲が良かったり悪かったりする」というテーマで、10代のお悩みや質問にお答えします。
登場人物紹介
ゲスト:信田さよ子さん
公認心理師・臨床心理士の資格を持つカウンセラー。親子、夫婦関係など家族問題に関するカウンセリング経験が多くあります。
公認心理師・臨床心理士の資格を持つカウンセラー。親子、夫婦関係など家族問題に関するカウンセリング経験が多くあります。
MC:太田尚樹さん
前回のYouTube Live「LGBTQあるある」に引き続き、MCを務めます。
前回のYouTube Live「LGBTQあるある」に引き続き、MCを務めます。
お便り紹介~親の仲が良かったり悪かったりする~
1個目なんですけども、親、お父さんとお母さんの不仲問題ついてで、お問い合わせいただいたものでございます。
”父が母に対して気に食わないことがあると、すぐ暴言を吐きます。早く死ね、飯まずい、使えないなどと言い、仲直りする時はお金を払わせるか自分の欲しいものを買わせます。”
”父が母に対して気に食わないことがあると、すぐ暴言を吐きます。早く死ね、飯まずい、使えないなどと言い、仲直りする時はお金を払わせるか自分の欲しいものを買わせます。”
前回の放送の後にいただいたものです。なんでこういった様に普段仲良いのに、急にこう激しい暴言を言ったりするんですかね?
家族って続けないといけないでしょう?1日で終わりだったら大丈夫だけど、お子さんが大きくなるまで、やっぱり家族を続けていかなきゃいけないですよね。
そうすると、実はどんなDVの激しい夫婦でも、やっぱり楽しそうにしてる時はあるんですよ。それはエネルギーを補給していかないといけないからです。嵐ばっかりだと自然界が壊れてしまう様に。
3日嵐があって、まあ27日間穏やかだ、また3日嵐が来ると。で、虐待もDVもそうですけど、この場合はDV的なお父さんですけど、本当に突然やってきて、それが過ぎるとなんかすっごい穏やかになっちゃうんです。穏やかな時と激しい時の落差で子どもは本当に混乱するんです。
そうすると、実はどんなDVの激しい夫婦でも、やっぱり楽しそうにしてる時はあるんですよ。それはエネルギーを補給していかないといけないからです。嵐ばっかりだと自然界が壊れてしまう様に。
3日嵐があって、まあ27日間穏やかだ、また3日嵐が来ると。で、虐待もDVもそうですけど、この場合はDV的なお父さんですけど、本当に突然やってきて、それが過ぎるとなんかすっごい穏やかになっちゃうんです。穏やかな時と激しい時の落差で子どもは本当に混乱するんです。
「本当にうちのパパとママは仲が良いのかな」、「でもあの時はママ死にそうな顔してたし、本当にパパの顔は鬼みたいで怖かった」と考えてしまう。
「でも目の前にいるパパはすごい穏やかだし、すごい楽しそうにしてるな」と考える。そうすると、子どもはその出来事をどうやって自分の中で1つの両親の姿として「統合」していいのか分からなくなってしまうのです。
「でも目の前にいるパパはすごい穏やかだし、すごい楽しそうにしてるな」と考える。そうすると、子どもはその出来事をどうやって自分の中で1つの両親の姿として「統合」していいのか分からなくなってしまうのです。
統合ですか?
心の健康のためには「統合」が大切
統合。インテグレーションって言うんですかね。実は私たちの精神の健康、メンタルヘルスで何が大事かというと、物事を統合できるかどうかなんです。
例えば、いつもひどいことばっかりある家で、仲のいい時が無ければ「うちはひどい家だ」って思えて子どもはそれで認識できるんですよ。
ところが、黒もあれば白もある場合、黒と白が絶対統合できないように、平和な姿とものすごい両親が中間無くパッと切り変わると、子どもは本当に混乱しちゃうんです。
ところが、黒もあれば白もある場合、黒と白が絶対統合できないように、平和な姿とものすごい両親が中間無くパッと切り変わると、子どもは本当に混乱しちゃうんです。
「どういうこと?」ってなっている状態が1番しんどいということですか?
そうですね。私たちの中に両立しないものが同時に頭にあると混乱してしまうのです。毒と薬が両方あるみたいな感じですかね?それが毒なのか薬なのかわからない。
だから目の前にあるのは、薬だったら飲まなきゃいけないけれど、でも毒だったら死んじゃうでしょう?でもね、毒と薬がいつも家の中に両方ある状態って、子どものメンタル的にはまずいことなんです。
だから目の前にあるのは、薬だったら飲まなきゃいけないけれど、でも毒だったら死んじゃうでしょう?でもね、毒と薬がいつも家の中に両方ある状態って、子どものメンタル的にはまずいことなんです。
じゃあ夫婦ケンカはいけないのか?っていったらそんなことはありません。夫婦ケンカで大事なことは、夫婦ケンカの状態から仲良くなるプロセス(過程)をどうやって仲良くなるかを子どもに見せるかということです。
そうすれば、黒から白へだんだんグレーになって、白になって行きます。そうすると上手く統合できるんです。ところが、あまりにも2つの世界がくっきりと分かれていると、なかなか大変なんです。
そうすれば、黒から白へだんだんグレーになって、白になって行きます。そうすると上手く統合できるんです。ところが、あまりにも2つの世界がくっきりと分かれていると、なかなか大変なんです。
子どもにも鬱はありますし、こういう投稿をしてくださる皆さんにも、たとえば「強迫性障害」といって、むやみやたらに手を洗いたくなっちゃうとか、何回も確かめないと家を出られないとか、少し変な症状が出てくることもあります。
それは、その人の問題っていうよりも、毎日見ている家族の世界がもうわけがわからない、統合できないっていうことから起きることがかなりあります。
それは、その人の問題っていうよりも、毎日見ている家族の世界がもうわけがわからない、統合できないっていうことから起きることがかなりあります。
夫婦ゲンカは子どものせいじゃない?
なるほど。僕が投稿者(小6か中1くらい)の気持ちで考えると、「これは結局仲良いんだろうか、仲良くないんだろうか、親は」とすごく混乱するだろうと思います。それは愛し合っているけど、ケンカもしてるって思ったら良いのですかね?
それ本当に親の責任なんです。
例えば、自分達夫婦がバカ、クズ、死ねと暴言を吐いているところを子どもが見ていたとします。それが1段落した後にお子さんのところに行って、「さっきはちょっと怖かった?」とか聞いて、「あんなこと言っちゃったけどさ、本当はママのことね、大事にしてるんだよ」「でもね、ああいう風に言っちゃって本当に、いつものことだけど、反省してるから、ママにも謝るし、これから仲良くするから、全然心配しないで良いよ」と言うべき。そこで1番大事なことは、子どもたちのせいじゃないということを伝えないといけない。
例えば、自分達夫婦がバカ、クズ、死ねと暴言を吐いているところを子どもが見ていたとします。それが1段落した後にお子さんのところに行って、「さっきはちょっと怖かった?」とか聞いて、「あんなこと言っちゃったけどさ、本当はママのことね、大事にしてるんだよ」「でもね、ああいう風に言っちゃって本当に、いつものことだけど、反省してるから、ママにも謝るし、これから仲良くするから、全然心配しないで良いよ」と言うべき。そこで1番大事なことは、子どもたちのせいじゃないということを伝えないといけない。
やっぱり子どものせいじゃないってことですよね?
そうなんですよ。「子どもはね自分のせいじゃないか」ってどこかで思っちゃうんです。
思っちゃうと思う。思っちゃいそう、僕もきっと。
「自分がああだから、あんな風に母親は言われるんじゃないか」とか、「父親もあんな風に言っちゃうんじゃないか」とかね。それは(ある種の)法則的なことなんです。そうなることになってるの。だから、夫婦ケンカは見せてはいけない。
絶対見せちゃいけないんですよ。そして残念ながら見せてしまったら、さっきのように、「心配かけてごめんね、怖かった?」って。「でもね、君やあなたのせいじゃないし、パパとママはこれから話し合って仲良くするようにするから。本当は仲がいいんだよ」ってことをね、子どもに説明しなきゃいけない。
絶対見せちゃいけないんですよ。そして残念ながら見せてしまったら、さっきのように、「心配かけてごめんね、怖かった?」って。「でもね、君やあなたのせいじゃないし、パパとママはこれから話し合って仲良くするようにするから。本当は仲がいいんだよ」ってことをね、子どもに説明しなきゃいけない。
ああ、そっか。怒っている時の理由を言うべきなんですか?
いや、理由は言うと良くないんです。だって夫婦ケンカってどっちも正しいと思ってるからやってるわけでしょ?こうだからこうだったんだよって説明するのを仮に母親が聞いていたら、「いやいやそうじゃない、ママはこうだったよ」って言うはずです。
そこでまた争いが起こります。だからなぜあんな言い争いになったかっていうことは、一切説明しなくていいんです。
そこでまた争いが起こります。だからなぜあんな言い争いになったかっていうことは、一切説明しなくていいんです。
その上で、「ああいうことが起きてしまったけど、自分たち夫婦は、やっぱり信頼しているし、まあ、パパしかいないな、とか、ママしかいないと思ってるから、そこはね、安心してね」っていうふうに、子どもには説明しないといけないと思います。
家族の中でどっちが正しいかを考えちゃう
はあ~。「どっちが正しいかっていう戦いになっちゃう」ってありましたが、僕がこの子の立場だったらきっと、「お父さんとお母さんどっちが正しいんだろう、どっちが間違ってるんだろう」ってすごく考えちゃうと思うんですよね。
それは良くない。家族の中でどっちが正しいか間違ってるかって考えたら、虐待・DVは必ず起こるんです。つまり、家族ってね正しいことをやる場所じゃないんですよ。それはすごく1番大事なこと。
よく子どもたちは「それ間違ってるよ、こっちが正しいよ」ってしつけを受けます。夫婦の間のDVでも虐待でもそうだけど、親は互いに「絶対に自分が正しい」と思ってる。
よく子どもたちは「それ間違ってるよ、こっちが正しいよ」ってしつけを受けます。夫婦の間のDVでも虐待でもそうだけど、親は互いに「絶対に自分が正しい」と思ってる。
しつけをする際は、子どもが間違ってると思うから殴ったり蹴ったりするわけです。私は、正しい・間違ってるっていうのは、裁判所が考えることだと考えています。
家族が裁判所になったら絶対ダメなんですよ。家族で1番大事なことがもしあるとすれば、子どもが安心してるかどうかっていうのが1番上に来るんです。いくら親が正しいことを言っていても、正論ばっかり言ってる家族ほど息苦しいものはありません。
家族が裁判所になったら絶対ダメなんですよ。家族で1番大事なことがもしあるとすれば、子どもが安心してるかどうかっていうのが1番上に来るんです。いくら親が正しいことを言っていても、正論ばっかり言ってる家族ほど息苦しいものはありません。
じゃあ、正しいか、正しくないかじゃないということですか?
みなさん、投稿してる方たち、そして遠い昔の太田さんが、「この家にいるとなんかホッとできるなあ」とか、「この家退屈だけど、なんか家にいると安心できるなあ」と思えれば、その家族は良い家族です。正しい家族じゃなくて、良い家族。
親のケンカに悩んでいる時はどうしたらいい?
そっか。今きっとホッとできないと感じてる彼は、(お父さんとかお母さんが悪いと思うんですけど、)どんな風に関わったらいいとか、何を伝えたら良いのですか?
それはね、お父さんやお母さんが機嫌の良い時を選んで、「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」って質問するんですよ。
「昨日の晩のああいうの見てるとすごい怖いし、もう心臓がバクバクしちゃうし、だけど、本当はパパとママは仲が良いの?」とか、「どう思ってんの」とか聞いてみたらどうでしょうか?それに対して、ちゃんと答えてくれる、「いや、そんなこと思ってるの?ごめんね、もうパパとママは仲直りしちゃったのよ。でもそんなに怖い思いをさせてごめんね」って両親がちょっと謝ってくれたら、まあまあ合格の家族ですよ。
「昨日の晩のああいうの見てるとすごい怖いし、もう心臓がバクバクしちゃうし、だけど、本当はパパとママは仲が良いの?」とか、「どう思ってんの」とか聞いてみたらどうでしょうか?それに対して、ちゃんと答えてくれる、「いや、そんなこと思ってるの?ごめんね、もうパパとママは仲直りしちゃったのよ。でもそんなに怖い思いをさせてごめんね」って両親がちょっと謝ってくれたら、まあまあ合格の家族ですよ。
しかし、それを聞くと大抵親は「何言ってんの」とか「その場で聞けばいいじゃない、1日たってからなんでこうしつこいことを言うの」とか、まあ大抵そういう風に言われちゃうと思うんですね。それを思うから、子どもは親に聞けないのですよね。
自分だったら聞くのがどうしても怖いって思っちゃいそうな気がしますね。怖くてできないという時はどうしたらいいんでしょうか?
私はね、親に絶対見られない何かがいいと思います。日記は大体親が読んでしまうかもしれないし、スマホもまだないかもしれませんね。もし、スマホがあれば、スマホの何かにメモして保存するといいと思います。
全部書いたり、どっかに記録しておくってことが1番大事かな。昨日の晩とか何月何日にこういうことがあった、もう怖くて寝られなかったとか。こういう風に親を責めるとか、親の悪口を言ってると思わないで、自分が怖かったこと、自分が緊張しちゃったっことを記録に残すっていうことはすごく大事なことだと思います。
全部書いたり、どっかに記録しておくってことが1番大事かな。昨日の晩とか何月何日にこういうことがあった、もう怖くて寝られなかったとか。こういう風に親を責めるとか、親の悪口を言ってると思わないで、自分が怖かったこと、自分が緊張しちゃったっことを記録に残すっていうことはすごく大事なことだと思います。
うーん。自分の気持ちを残すという・・・
そうですね、出来事って言うんですかね。自分が感じたこと、自分が見たこと、聞いたこと、それを全部記録として書く。
そしたら、確かにすっきりするのかな、ちょっとは。
すっきりはね。書かないより書いたほうがいいと思う。抱え込むというのは、ものすごい私たちを病ませるんですよ。ましてや未成年だと抱え込めないからね。どっかに書くなり、本当は話すことが1番いいんだけど、話すと子どもが責められたりするので・・・。
自分もこういうことがあったら黙っとかなきゃとか思っちゃいそうだなあと思います。
子どもはわがままでいい?
小学校高学年から中学生にかけて、子どもに色々な問題が起きます。例えば髪の毛を抜いちゃったりとか、ちょっとリストカットしちゃったり、色んな問題が起きる。
その背後にはその子たちが決して言葉にできない、でも抱え込んでいる何かかがあるんじゃないかと、私のような臨床心理士や公認心理士たちはとらえます。その子に何か問題があって、わがままだとか、自分に甘いといった問題が起きることはないんです。
その背後にはその子たちが決して言葉にできない、でも抱え込んでいる何かかがあるんじゃないかと、私のような臨床心理士や公認心理士たちはとらえます。その子に何か問題があって、わがままだとか、自分に甘いといった問題が起きることはないんです。
そもそも私は、子どもは元来わがままであるべきだと思っています。日本は逆なんです。子どもの時は「自分が悪いんじゃないか」と思って、「こんなわがままな私・・・」と思って、大人になってから、恋人を作って、結婚して一緒に暮らしだすと、相手に対して今まで感じたこともなかったような「なんであんたが悪いのに、私がこうなのよ」っていうようなことが一気に噴き出てくる。そちらの方が怖いですよ。
子どもはわがままでいて、育って、社会に出たりいろんなことをすると、少しずつわがままが修正されていきます。それを受け入れていけば良いわけであって、未成年のうちから、「自分わがままじゃないか」なんて、自分を責めるなんてことは、百害あって一利なしという風に私は思います。
他の回が読みたい方はこちらから。