「からだは女性、こころは男性」#2
トランスジェンダー・藥師実芳さんの大学や進路の選び方
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LGBTと言われる人たちのことをもっと知ってもらおうと活動している、NPO法人ReBit代表の藥師実芳さん(27歳)のお話の2回目です。
LGBTとは、
L=レズビアン(女性を好きになる女性)、
G=ゲイ(男性を好きになる男性)、
B=バイセクシュアル(女性も男性も両方好きな人)、
T=トランスジェンダー(体と心の性別が異なる人)のこと。
今回は、高校生の時に自分がトランスジェンダーであることを友達に打ち明けた藥師さんが、
大学で今の団体を立ち上げたころのことを聞きました。
大学の選び方
トランスジェンダーのことを調べてみると、働けないなどの情報があって、ずっとスーツを着て働く仕事は将来できないと思っていたので、
資格があればいいかもしれないと思って、
資格の勉強につながる学部を選びました。
でも僕の場合、大学生になってから運良くいろんなLGBTの大人に出会えたので、
「いろんな仕事が選べるんだ」と思って結局資格取得は止めてしまいました(笑)
学生団体ReBit立ち上げのきっかけ
イベントをやるサークルに入っていて、ある時、自分が提案し、LGBTをテーマにイベントを開くことになりました。
イベントを運営するなかで、サークルメンバー全員に、ひとりひとりカミングアウトをして、
イベントをなぜ開催したいのか伝えて回りました。 イベントが大盛況で終わってからも、「まだやろう!」とサークルのメンバーが言ってくれて、
一緒にReBitを立ち上げてくれました。
みんなで話し合うなかで、学校の授業でLGBTについて伝えたいということで、学校現場で講演をすることをはじめました。
家族へのカミングアウトは?
家族には、高校の卒業式の後に打ち明けたんです。もう男の子っぽい格好をして過ごすようにしていたこともあって
「なんとなく気づいているだろうな」と思っていました。 だから軽い気持ちで、「知ってると思うけど、トランスジェンダーだから男として生きていくね」と言ったら、
母親は全然気づいていなかったみたいで、
膝から崩れ落ちて泣き始めたんですよ。
「生んでごめん」と言われ悲しませてしまい…。
家族とは、大学生のころはうまくいきませんでした。
何年か経ってから分かったのですが、
母親は、自分の生み方や育て方が悪かったからトランスジェンダーになってしまったんだと思っていたそうです。
でも本当はLGBTであるのは産み方や育て方とは関係がありません。
カミングアウトから3年経ったころから応援をしてくれる様になりました。
一度伝えたら全部分かってくれるんじゃないかと思っていた僕がいたけれど、
そうではなく、繰り返し対話を続けていくことが大切だと感じました。
就職活動はどうだった?
自分がLGBTだと打ち明けながら就職活動をしました。面接に行ったらその場で帰れと言われたこともありますが、
理解のある会社もあり、そうした会社に就職することができました。
今は企業の環境も変わってきています。
「会社で働くことはできない」と思っていたころの自分や、
就職を心配するLGBTのみんなには、「自分らしく働けるよ」って言いたいです。
NPO法人ReBitに専念しようと思った理由
ReBitは活動が増えて、「誰かが専任でやらないと無理」という状態になりました。
仕事が嫌ではなかったですが、「本当にやりたいことはなんだろう」と自問した結果、
退職してNPO法人を立ち上げ代表になりました。
自分が面白いと思えたり、興味のあることをやったりすれば、
少しでも周りを変えられるっていう実感はあったので、やってみようと思いました。
周りにどうしたら理解してもらえるかを考え、活動の幅を広げていった藥師さん。
次の最終回では、みんなが自分らしく生きるために、ぜひ知っておいて欲しいことを聞きます。(つづく)
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