リストカットなどの自傷行為をやめられない(精神科医執筆)
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リストカットをはじめとする自傷行為は、かつては20代の女性が失恋後にした印象がありましたが、最近は10代の男性・女性とも約10%の人がしていると言われています。しかし問題は、リストカット・自傷行為をしている人のほとんどがその行為を「誰にも相談できていない」ということです。
リストカット・自傷行為をしてしまうメカニズム
そもそも、なぜリストカット・自傷行為をしてしまうのでしょうか。「彼・彼女の気を引くため」「周囲の同情を買うため」などと考えられがちですが、そうではありません。本人は「自分を切り刻むほどつらい気持ち」なのです。しかしその気持ちを上手く説明できないため、手首を切ることで「代償(かわりにつぐなうこと)」しています。本来は誰かにつらい気持ちを言葉や文字で伝えられると良いのですが、口下手だったり、対人不信に陥っていたりすると、なかなかそうもいきません。
リストカットをする場合の多くは「孤独感(ひとりぼっちという感覚)」や「空虚感(心にぽっかりと穴があいたようなむなしい感覚)」、誰にも頼れないという「無力感」も覚える人が多いです。
この背景には友達関係や家族関係などにおいて、安心できる人間関係が少なかったことが考えられます。このため、他人へこころを開けず、つらい気持ちを閉じ込め、自分のからだを傷つけることで代償しているのです。
リストカット・自傷行為をやめるにはどうしたら良い?
それでは、リストカット・自傷行為はつらい気持ちをやわらげる方法として黙認しても良いのでしょうか。いえ、そのようなことはあってはなりません。リストカット・自傷行為はつらい気持ちをやわらげるのは唯一の手段のように感じるかもしれませんが、それを続けると、一種の依存症のようになり、止められなくなってしまいます。さらにエスカレートしてしまい、手首から腕・足・首などへと自傷する場所がうつり、命に関わることもあります。
また、市販薬を買ってたくさん飲んだり、非合法の薬を入手したりする人もいます。そのため、できるだけ自分のつらい気持ちを「言葉」や「文字」により表現できるようにしていく必要があります。
しかし、自分ひとりでは難しいことでしょう。もともと口下手だったり対人不信だったりして、リストカット・自傷行為しか、自分のつらい気持ちを表現できなかったのですから。まずは親や友達、先生、塾やアルバイト先の人など周囲のだれかひとりでも良いので相談することからはじめましょう。
これを適切な「援助希求行動(助けを求める行動)」と呼びます。
そして、誰かに助けを求められなかったり、「気づいたら傷が増えていた」など痛みや記憶がなくなってきたり、自傷以外に健康を害する行為(危険な性行為、摂食障害、過度な飲酒など)が見られるようになったら、病院の受診も検討してください。カゼなど体の病気にかかったら治療するように、こころの病気も治療していかなければ、症状が必要以上に長引いたり、違う症状につながりかねません。
ただ、病院をひとりで受診するのは抵抗もあるでしょうから、親や先生・養護教諭、友達などへ相談し、どなたかと一緒に受診するが良いでしょう。
誰にも相談できない場合はこのサイト内から相談できるサービスを使用したり、病院のお問い合せフォームから相談したりしてみてください。
友達のリストカット・自傷行為を見つけたら?
友達から相談を受けたり、見かけたりした側が心がけるべきことは、本人がリストカット・自傷行為をしていたことを叱ったり、責めたり、無理にやめさせようとしたりしないことです。本人はリストカット・自傷行為せざるをえなかったからそうしていただけで、したくてしていたわけではありません。したがって、行うべきことは本人のそばに寄り添い、気持ちをくみとることです。心理学の専門用語では「傾聴(耳を傾け熱心に聴くこと)」「共感(相手の感情や体験を自分のことのように感じること)」「受容(相手を否定も肯定もせずそのまま受け入れること)」と呼びます。なぜリストカット・自傷行為にいたったのか、そこに至るまでの気持ちを最後まで聞いてあげること、つらかった気持ちに寄り添うことだけでも大きな支えになります。
そして、上記のようにリストカット・自傷行為の背景には高い比率で精神疾患が想定されますので、ひとりで友達を変えようとせずに、病院やクリニックの「精神科(心療内科)」を受診・紹介するのが良いでしょう。
その際に、友達ひとりで病院受診は心細いかもしれないので、病院まで一緒に行ってくれる大人を探す手伝いなどもすると、前に進みやすいかもしれません。
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