働く前に知りたい税と社会保険
厚生年金とは?入ると何が良いの?
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働く前に知りたい税と社会保障では、雇用保険と、健康保険について解説しました。今回は社会保険シリーズ最後のコラムとして、「厚生年金」についてお話しします。
厚生年金とは?入ると何がいいの?
働く前に知りたい税と社会保障では、雇用保険と、健康保険について解説しました。今回は社会保険シリーズ最後のコラムとして、「厚生年金」についてお話しします。 厚生年金と似た名前に国民年金というものがありますが、一般的に会社員・公務員は、厚生年金に入っていれば、国民年金にも入っていることになります。今回は、厚生年金に入っていると、どんな保障があるのか見ていきます。厚生年金に入っていると、年金としてもらえる保障は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つがあります。少し難しいので、それぞれどんな保障なのか見ていきましょう。
65歳以上になったら一生もらえる「老齢年金」
1つ目は、老後の生活の保障です。「老齢年金」と呼ばれています。10年以上保険料を納めていれば、原則65歳になった月の翌月から一生年金をもらうことができます。例えば月給20万円で20歳のAさんが65歳まで45年働くと、65歳以上以降、月に約11万円もらえます。 ちなみに、厚生年金ではなく、フリーランスやアルバイトなどで国民年金にしか入ってない場合は、月に約6万5千円ほどに下がってしまいます。
65歳以降、食費や生活費などにかかる費用は1世帯当たり平均約23万と言われているので(総務省家計調査より)、老後の生活保障を考えると、厚生年金に加入したほうがメリットが大きくなります。
障害を負った時の生活保障「障害年金」
2つ目は、病気やケガで障害を負ってしまったときの生活の保障です。「障害年金」と呼ばれています。これは、病気や事故などで重い障害を負った場合に受けることができます。 障害年金ははじめてその病気や障害になって病院に行った時にどの年金制度に加入していたかで受給できる内容が変わります。働いた期間やその期間の給料額によってもらえる金額が決まり、その病気やケガの程度によっても金額が変わる仕組みです。対象となるのは、病気やケガなどによる障害だけでなく、がんや脳梗塞などの重い病気だったり、うつ病などの精神障害も認められることがあります。
なお、障害等級1級または2級の場合は、子どもや配偶者などの家族を扶養していると、独身よりも多い金額がもらえます。また、国民年金加入者で障害基礎年金の場合は、1級で月額81,427円、2級で65,142円のため、障害厚生年金との差額は1級で月額17,838円、2級で月額27,272円となります。また国民年金の場合、障害3級は障害年金がもらえません。
厚生年金に入っていると、国民年金だけに入っているよりもあらゆる保障が追加されるので、安心感が違うかもしれません。
なお、こちらの障害年金は20歳未満でも会社員で厚生年金に加入している方は受けられます。
自分が亡くなってしまった時に家族がもらえる「遺族年金」
3つ目は、自分が亡くなった時、子どもや配偶者など一定の家族の生活を保障するお金です。「遺族年金」と呼ばれています。いくらもらえるのかを見てみましょう。男性が亡くなった場合と女性が亡くなった場合や、子どもの人数、遺族の年齢などでもらえる人と金額と期間に違いがあります。例えば、妻はほぼ無条件にもらえますが、夫、両親、祖父母は受給する年齢に決まりがあります。また、夫の死亡時に子どもがいない30歳未満の妻の場合、年金がもらえるのは5年間です。 男性の方がもらえる可能性や金額が低いなど、納得行きづらい部分はありますが、月給20万円のCさんとDさんのケースでは、どちらかが死亡後、9-10万円ほど毎月支給される形になります。子どものことを考えると保障される金額が一定数あることは安心につながります。
また、死亡された方の給料と働いた期間によっても、もらえる金額は変わります。
なお、これらは厚生年金に入っている人向けで、国民年金だとほとんど遺族としての保障がありません。
このように人生の様々なリスクに対して保障してくれるのが厚生年金なのです。
年金と聞くとまだまだ先の話…とピンとこないかもしれませんが、将来何かあった時にお金をもらうことができる大事な仕組みなのです。
正社員でなくても厚生年金に入れる場合も
先ほども書いた通り、一般的には法人企業で会社員として働いていれば原則は週30時間以上働くことで、厚生年金に入ることが義務づけられています。また、従業員が101人以上の企業など、一定の条件を満たした場合には週20時間以上でも入ることが義務づけられます。これらの条件を満たせば、正社員でなくても、派遣、アルバイトでも厚生年金に加入できるのです。 個人事業主であり、従業員5人未満か美容室、農業などの一定業種では厚生年金に入ることが義務づけられていないこともありますが、多くの場合、厚生年金に入ることは義務づけられています。会社で厚生年金に入れないとどうなる?
自分の勤務先で厚生年金に入れない時は、「国民年金」に入ります。ここまで見てきたように、国民年金は厚生年金に比べてあらゆる保証額が少なくなってしまいます。
また、厚生年金は会社で保険料を給料から自動で差し引いて手続きしてくれますが、国民年金は自分で手続きをし、保険料を支払わないといけないので注意が必要です。
国民年金の手続きや詳しい内容は、住んでいる自治体の年金事務所、市役所、区役所で確認してみましょう。
今回は厚生年金に入ると何が保障されるのかについて見てみました。今は困らないから、いざというときにお金を受け取ることができなくなるので、働く時には、厚生年金に入れるかしっかり確認してみることをおすすめします。
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出典
*1協会けんぽ「令和3年度保険料表(令和3年4月分から)」(2022-10-13最終閲覧)*2日本年金機構「国民年金保険料」2022-08-08(2022-10-13最終閲覧)
*3日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」2022-04-01(2022-10-13最終閲覧)
*4 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」2022-05-12(2022-10-13最終閲覧)
*5日本年金機構『令和4年10月からの短時間労働者の適用拡大・育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直し等について』2022-10-03(2022-10-13最終閲覧)
*6日本年金機構「遺族年金ガイド」(2022-10-13最終閲覧)