親に相談したくない、できない…私は変ですか?(臨床心理士執筆)
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私はなぜ親に相談できない?
あなたが親に相談したくないと悩んでいるのであれば、次のA子さんと友達の会話に共感する部分があるかもしれませんね。少し会話をのぞいてみましょう。友達「昨日、お母さんとタピオカのスタンドを3軒はしごしたんだ。どこのお店もいっぱい人が並んでて大変だったよ」
A子さん「へー、お母さんと行ったんだ。並んでる間とか、どんな話をしてるの?」
友達「えーっと、この前の3者面談のときの先生のネクタイが意外に似合ってたみたいな話とか。あと、2年の時から学校説明会に行っておいた方が良いかなって進路のことを相談したり」
A子さん「そっか。親に相談したりするんだね」
友達「A子は親に相談したりしないの? A子のお母さんやさしいし、話も聞いてくれそうじゃん」
A子さん「……そうだね。お母さんもお父さんも、きっと私のことを心配してくれている優しい親だし、『何でも話しなさい』って、言ってくれる……」
と言った後、A子さんは
「なのに、なぜ私はお母さんたちに相談ができないんだろう」
という言葉を飲み込んでしまいました。
親だからこそ相談できないことがある
「なぜ私はお母さんたちに相談ができないんだろう」と感じているA子さんの心の背景には、どんなことがあるのでしょうか。 例えば、“周りに迷惑をかけない子”や“頑張る子“、“自分のことは自分で決められる子”といった親からの評価や期待を裏切りたくないA子さんがいるかもしれません。また、幼い弟や妹の世話に大変そうなお母さんや、仕事が忙しくて疲れきっているお父さんを見て「私は、親に心配をさせてはいけない」と思っているA子さんもいそうです。
さらには「どうせ親は、自分の言葉を聞いてくれない」と、悲しいけど決めつけたくなっているA子さんがいるとも考えられます。他にも、様々なこころの背景を持つA子さんがいると思います。
大事なことは、あなたが、どのA子さんであっても【親に相談できない気持ちを抱いていることは、決して悪いことではない】ということです。
この“親に相談できない気持ち”を他の表現にしてみると、【親との距離感】となるかもしれません。
親と距離ができていくことは、自然なこと
あなたが赤ちゃんの時は、自分と親が一体になっていて、その区別はついていません。それが、だんだんと心の機能(働き)が成長してきて、自分と親とは別の人間であることに気づいていきます。 これは、あなたが“自分”という存在を築いていくために、とっても大事な一歩です。この時に、親と自分の間にどのくらいの距離を持つのかは、一人ひとりで違ってきます。
つまり、人それぞれに、親との距離感があるのです。その距離感は、兄弟姉妹であっても違います。
ましてや、友達から伝わってくる親子の距離感と、あなたが感じている親との距離感が異なるのは自然なこと、と言えそうですね。
それに不思議なことに、親との距離感はいつまでも同じではないのです。年齢を重ねたり、あなたが何を経験したりするかによって、親との距離感が近づいたり、時には少し離れたりします。これも自然なことです。
親と距離ができたのは私のせい?
さて、ここまで読んできたあなたは、疑問に思っていませんか?「親との距離感は、私が決めていることなのか?」と。
あなたも気づいているように、親との距離感には、お父さんやお母さん側のこころの機能(働き)も関係します。つまり、あなたと親の ”こころの組み合わせによる距離感” が【相談ができない気持ち】を生み出していることもあります。
もし、あなたが親との距離感を縮めようと近づいて、「相談してみよう!」と思ったときに、親に受け止めてもらえなかったら、不安が強くなってしまいますよね。そのような経験の積み重ねも、あなたと親の”こころの組み合わせによる距離感”を生み出しています。
決して今の距離感は、あなたひとりが作り出したものではないのです。
もしも今、「自分と親の“こころの組み合わせによる距離感”は、相談するのには少し遠いな」と感じたら、【相談できる距離感の人を探す】という方法もあります。
親でも理解できないことはある
「でも、やっぱり親に1番に相談しなければいけないのでは?」「親は私のことを何でも分かっているだろうし……」と思うかもしれないし、そう思いたい気持ちも強いかもしれません。 でもね、残念ながら、親でも理解できないことはあるのです。じつは、人は、他者の行動や気持ちを理解するときに、今までの自分の経験や、よく似た過去の場面で覚えた感情を参考にします。つまり親は、自分が中学生だった時の経験や、感覚・感情をベースにあなたを理解しようとします。
お父さんやお母さんが中学生の時にはLINEはもちろんスマートフォンすら無かったように、社会環境も友達のつきあい方も進路についての考え方も、あなたと親には大きなギャップが生じています。これが、親には理解できないことがある理由です。 なので、同じような時代を生きている人、例えばあなた自身が目標としている1年後の進路や3年後に自分がそこにいたいと望んでいる環境や状況に、今すでに立っている人に相談してみるのも良いのではないでしょうか。部活の先輩や親せきのお姉さん、友達のお兄さんなどに「今、気になっていること」から質問してみるのも、ありです。
もし、そういった人が身近にいないときには、インターネットで、自分の将来の目標について、積極的で前向きなメッセージを発信している人のブログなどを読んでみるのも良いかもしれません。
そこにあなたが相談したことへの大きなヒントが書いてあるかもしれませんよ。
あなたのなかの【適切な距離感の人に相談できる力】を信じてください。
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